-
*お金の話その2
前回は「家計簿をつけて収入と支出を把握することで将来に対する不安を減らしましょう」ということを書きました。
とは言っても、「もし資金がなくなったら・・・」と考える方もいるでしょう。
万が一、老後資金がなくなった場合の対処方法を書いておきます。
- 自宅を担保に金融機関から資金を得る『リバースモーゲージ』の活用
- 自宅などの売却資金を活用
- 貯蓄性の生命保険があれば解約するか保険を担保に借入
- 知人や親族に助けを求める
- 生活保護の申請
いずれにせよ、自分たちだけでどうにもならない場合は早めに周囲に相談して対処することがポイントです。
定年を迎えた後も人生には様々なライフイベントが待っています。
旅行を計画したり自宅のリフォームを考えている方もいらっしゃるでしょう。
子どもの結婚資金援助や自身の葬儀費用など、まだまだお金の必要性は続きます。
一番怖いのは、無計画に老後が始まって次第に気力・体力が衰えて何もできなくなってしまうことです。
働けるうちは仕事をして収入を得るためにも、今から計画を立てて健康でいられるように気をつけましょう。
-
*お金の話その1
人生100年時代と言われ、この先生きていくためにはいくらあれば安心して過ごせるのか・・・
物価の高騰で必要最低限な物を買いに行っても出ていくお金の感覚が前とは違うのを肌で感じている今日この頃です。
高齢者の方は年金だけでは足らず、貯金を崩しながら毎日の生活を送っている方も多いのではないでしょうか。
高齢者の収入には『年金収入』『年金以外の収入』『一時金』があります。
『年金収入』とは老齢基礎年金、老齢厚生年金、企業年金、個人年金、遺族年金、障害年金です。
『年金以外の収入』は給与や役員報酬、パート収入、家賃収入、子からの仕送りなどがあります。
そして『一時金』というのは保険の満期金や相続・贈与で得たお金です。
まずは毎月の収入と支出を把握するためにも家計簿をつけることをお勧めします。
3ヶ月〜半年くらい家計簿をつけることによって我が家の状況が見えてくると思います。
収入を見積り、どのくらい暮らしにお金をかけられるかを考えることはとても大切です。
収入の目安がついたら日々の生活費とともに暮らしの中でかかる様々なイベント費用についても見積もってみましょう。
食にかかるお金、趣味に使うお金など、人それぞれの価値観によってお金の使い道は違います。
収入と支出、そしてライフイベントを見つめ直すことで将来に対する不安も少しは減るのではないでしょうか。
-
*おひとりさまの終活
人間誰しも死ぬ時は一人といいますが、亡くなる前後に面倒をみてくれる人がいるかどうかは大切です。
自分の希望や思いをエンディングノートに書いていたとしても、それを実行してくれる人がいなければ、それらを叶えることはできません。
「おひとりさまの終活」は誰に託すのかが重要なポイントになります。
パートナーや子どもがいない場合、身内だと甥や姪に頼ることになると思います。
また、地域の世話人や友人・知人になるかも知れません。
どちらにしろ、日頃から万一の際にお願いすることを伝えておきましょう。
自分より若い世代の身内や友人とコミュニケーションをとっておくことも必要です。
人間関係は1日にしてできるものではありません。
日々のお付き合いの中で築き上げていくものです。
近所の集まりやボランティアなど、健康で動けるうちは積極的に参加しましょう。
-
*活用しませんか?成年後見制度
”夫の認知症が進み、正常な判断ができなくなった。
夫の土地を売って、介護費用に当てたい。売却の手続きは妻がする”
”父の認知症が進み、正常な判断ができなくなった。
父の定期預金を解約したいので、銀行の手続きは息子がする”
この2パターンですが、両方×です。
契約については家族であっても他人と同じなので本人の代理はできません。
認知症以外にも事故や病気などで判断能力が不十分になった人、知的障がい者や精神障がい者の権利や財産を守り意思決定を支援するのが『成年後見制度』です。
後見制度には「法定後見」と「任意後見」があり、判断能力が低下した時のためにあらかじめ準備しておけるのが「任意後見」です。
法定後見は家庭裁判所で選任されますが、任意後見は自分で後見人を選任して契約できます。
”今はまだ元気だけど、判断能力が低下してからの支援が欲しい”といった将来型や、”既に今困っているから判断能力が低下する前からの支援が欲しい”というふうな移行型など、本人の希望に合わせた段階でのプランも選べます。
任意後見契約にプラスして「見守り契約」や「死後事務委任契約」を一緒に締結することで、この先も安心して暮らせるのではないでしょうか。
-
*自分らしく生きるお金の算段
「人生100年時代」といわれる現代で、老後資金の準備はとても大切です。
2,000万円必要といわれていたのが、今は5,000万やら1億などと書かれている週刊誌の記事があります。
それらを見て不安になっているご高齢の方も多いのではないでしょうか?
平均寿命が延び、一体いくらあれば安心して老後を過ごせるのか…
90歳 95歳 男性 27.5% 10.1% 女性 52.0% 27.1% 厚生労働省「令和3年簡易生命表の概況」より
上の表で分かるように、女性の場合は約2人に1人が90歳まで、約5人に1人が95歳まで生きる可能性があるといえます。
しかし、年金額や持っている資産、生活にかかるお金などは人それぞれです。
また、住んでいる地域によっても異なるので周囲の情報に惑わされず、まずは自分のライフスタイルを見直して検討してみましょう。
資産管理のポイント
・周囲の雑音に惑わされない
・少しでも長く収入を得るための活動を行う
・投資資産は年齢を重ねるごとに縮小していく
・自宅のリフォーム費用、施設への入所費用も準備しておく
・ムダな出費を控える(保険、自動車、交際費)
ライフイベント表の作成
この先10年20年後までのイベントを書き出してみましょう。
具体的に何年後にどのようなことが起きるか、そのためにはどれくらいの費用がかかるのか、ある程度把握しておきます。
(例)
経過年数 年 齢 人生のイベント
今年 60 退職・再雇用、夫婦で旅行、終活開始
1年後 61 家のリフォーム、孫小学校入学
2年後 62 父親の3回忌、町内会の仕事を始める
3年後 63 キャンピングカーを購入 旅に出る
4年後 64 終活の実践を始める
5年後 65 仕事を辞める、子に住宅資金贈与200万円
6年後 66 夫婦で田舎に移住
家計の支出
家計簿をつけている人であれば、毎月だいたいの支出が分かると思います。
年金の範囲内で暮らせるか、無理そうな場合は預貯金からいくら取り崩せば毎月暮らせるかを試算することができます。
今まで家計簿をつけていなかった人は、まずは3ヶ月から半年ほど家計簿をつけてみて我が家の支出を確認しましょう。
老後の生活費をどこから捻出しているかを調べたものでは、やはり公的年金が最も多いようですが定年後も働いて収入を得ているようです。
子どもが親の収入を知ることができれば、いざという時に施設入所など、どれくらいの介護を受けさせることができるのかも分かります。
親のお金だけで大丈夫なのか、子である自分たちが援助しなければならないのかが明らかになるので、家族間でお金の話をしておくことも大切です。
-
*ペット(信託契約等)について
日本では亡くなった飼い主の財産をペットに相続させることはできません。
自分が亡くなったあと、ペットはどうなってしまうのか心配ですよね。
ペットといえど大切な家族の一員です。
動物を我が子のように大事に育てている方がほとんどです。
飼い主にもしもの事態があった時のために、大切なペットを「託す相手」と「託す内容」と「託す方法」を検討しておかなければなりません。
まずは託す相手ですが、知り合いや身近な人が引き取ってくれる場合はいいですが施設やNPO法人を頼る手もあります。
ペットが安心して余生を過ごすための施設を運営していたり、新しい飼い主を探してくれるNPO法人を調べます。
早めに見当をつけてボランティアなどに参加しておくことをお勧めします。
ペットを託すにあたって、具体的にどれだけの財産・対価を準備しておくべきかも決めておく必要があります。
生活費や医療費、また平均的なペット葬儀費用などを参考にしてください。
かかりつけ医や病歴、ペット保険加入の有無についてもエンディングノートに記載しておきましょう。
他にもう一つ「信託」という法律行為を活用する方法があります。
信託とは自分の財産を信頼できる人や団体に託す、文字の通り「信じて託す」ということです。
一般的には、他人間で契約に基づいて財産の譲渡を行い、定められた目的に従って財産の管理・処分を行う行為をいいます。
信託を使う一番のメリットは、ペットのお世話に強制力と監視力をつけることができるという点です。
なぜなら信託では受託者に課せられる義務があるからです。
①善管注意義務(善良な管理者の注意を怠らない)
②忠実義務(受益者のため忠実に事務にあたる)
③分別管理義務(信託財産とその他を分別して管理する 等
遺言書では、ペットのお世話を頼んだとしても頼まれた人の善意に頼るしかありません。
また、遺言書にペットのお世話の方法(例えば「このフードを食べさせてほしい」とか「この動物病院で受診してほしい」)などの要望を入れてもそれが実現できるとは限りません。
信託では契約を開始する条件として、委託者が生きている間、希望するお世話が実現できているか見守る設計も可能となります。
(最初に信託を設定する際に数十万円の費用がかかります)
大切な家族の一員でもあるペットを自分が万一の際にどのように守っていくかも、現代のペット社会では考えておかなければなりません。
-
*おひとり様の生前契約
国勢調査によると、2030年には男性の3人に1人、女性の4人に1人が生涯未婚者になるという予測が出ているそうです。
「未婚の方が行動や生き方が自由である」「結婚はしたいが経済力が足りないから諦めている」「結婚する必要性を感じない」
理由は色々あるようですが、この先も生涯未婚率が高くなることは確実だと考えられます。
年齢を重ねることにより解決が難しい問題が出てきますが、互助組織等と生前契約を結ぶことで解決可能なこともあります。
おひとり様終活のポイントは、自分のことが自分でできなくなった場合を想定し、事前に生前契約を結ぶことで自分の希望を伝えて実施できるようにしておくことです。
生前事務(後見事務)で契約可能な事
・入院、賃貸住宅入居、老人ホーム等への入所の際等の身元引受保証
・認知症などになった場合の後見、ケア
・手術の立会い、医師からの説明への立会い、同意の代理等
・医療上の判断に関する意思表示の代理
・財産の維持管理や処分等の支援や代理
・介護保険その他必要な福祉サービスの契約の代理、立会い 等
死後事務で契約可能な事
・火葬、納骨、葬儀
・住んでいた住居の片付け、賃借の場合は返還事務、同居していた人に対する住替え支援
・保険、年金などの諸手続き
・クレジットカードなど各種カード類の解約、返還手続き
・個人情報(パソコン、携帯電話等)の消去、破棄
・ペットなど死者が愛用していたものや情報の処分
・祭祀財産の処理(墓、仏壇の管理や処分なども含む)
・死後もお世話になった方へのお祝いや香典などの社会参加の代理、代行 等
生前契約を結ぶ前に確認するポイント
!契約に関する書類や説明は十分に行われているか
!費用についてホームページ等に明示してあるか
!決済機構と分離してお金の管理が行われているか
!実績や規模について確認 等
生前契約は誰に依頼するのか、元気なうちから決めておくことが重要です。
○身内で甥や姪に依頼
○友人知人に依頼
○弁護士や司法書士などに依頼
○NPOなどに依頼
現在ではNPO法人などで生前契約を結び、自分で自分の意思を伝えられなくなった時から亡くなった後までの様々なことを依頼できるところがあります。
ただし玉石混合なので見学会に参加したり、実際に利用している人の話を聞いたり、契約時には契約書などの契約事項をしっかり確認することを忘れないでくださいね。
-
*死後事務委任契約と民事信託
自分が亡くなった後の諸手続について心配されている方も多いのではないでしょうか。
委任者(本人)が第三者(個人、法人を含む)に対して、亡くなった後の諸手続、葬儀、納骨、埋葬に関する事務等について代理権を付与して死後事務を委任する契約があります。
死後事務委任契約
どんなことを委任できるのか、例を書いておきますね。
○亡くなった後の医療費の支払いに関する事務
○家賃・地代・管理費等の支払いと敷金・保証金等の支払いに関する事務
○老人ホーム等の施設利用料の支払いと入居一時金等の受領に関する事務
○通夜、告別式、火葬、納骨、埋葬に関する事務
○菩提寺の選定、墓石建立に関する事務
○相続財産管理人の選任申立手続に関する事務
○行政官庁への諸届け事務
これらは親族はもちろん、知人や信頼をおける人であれば誰でも可能なので自由に選べます。
(特別な資格はいりません。)
親族がいない場合や、頼めない事情がある方は司法書士などの専門家に任せることをお勧めします。
インターネットで無料ダウンロードできるものや書籍などでひな形が書かれているものもあります。
家族や親族などの間で行われる、営利を目的としない信託で「民事信託」というものがあります。
これは信託銀行等で契約する一般的な商事信託とは内容が異なります。
民事信託
メリットは、高齢者やその他財産管理が困難となることが見込まれる人が、実際に困難になった際にも財産管理の継続性を維持できることです。
(例)認知症対策、相続対策、事業承継対策、親亡き後の問題対策
自分の財産を「誰に」「どのような目的で」「いつ」渡すことをあらかじめ生前に契約し、その財産を管理できる権利を信頼できる相手に移し、将来その契約を確実に実行させていくことができます。
民事信託には、基本的に3者の登場人物がいます。
・委託者(財産を持っている人)
・受託者(財産を管理する人)
・受益者(利益を享受する人)
民事信託は公正証書でなければならないので、公証人役場で作成します。
色々なケースがあるので、専門家が介入するケースがほとんどです。
ひな形は書籍やインターネットでダウンロードできます。
-
*委任後見契約と見守り契約
年老いてゆく不安の中に「認知症になったらどうしよう」と考える人も少なくないと思います。
判断能力が失われてしまうと、自分で財産を管理したり契約したりすることが難しくなります。
このような場合に自分の代わりに財産管理をしてくれるのが後見人です。
任意後見契約
後見人には、あらかじめ自分で決めて契約しておく『任意後見人』と家庭裁判所で選任される『法定後見人』があります。
『任意後見人』
本人が十分な判断能力を有する時に、あらかじめ自分で契約しておく。
任意後見人は自分で後見人を選ぶことができる。(例:自分の子どもなど)
後見人には、預貯金の管理・払戻しや、不動産等の重要な財産の処分など「財産管理に関する法律行為」と、介護サービスの契約締結や福祉関係施設への入所契約締結などの「身上監護に関する事務」を委任することができます。
『法定後見人』
認知症や外傷で判断能力が失われた時は、申立人の意見を聞いて家庭裁判所が選任します。
任意後見契約は公正証書でなければならないので、公証人役場で作成してもらってください。
法律の専門家である公証人が本人の真意を確認し、確実な内容の契約が結ばれるようサポートしてくれます。
見守り契約
支援する人が本人と定期的に面談や連絡をとり、備えとしての成年後見制度(任意後見)をスタートさせる時期を相談したり、判断してもらう契約です。
この契約をすることによって、定期的に本人と支援する人の意思疎通が可能になるため、備えとしての成年後見制度(任意後見)の契約をしてから数十年間本人と会わないといったようなことを防ぐことができ、信頼関係を継続させることができます。
ひな形は書籍やインターネットで無料ダウンロードできます。
-
*財産管理委任契約
年齢を重ねるごとに不安になる老後。
「認知症になったらどうしよう…」
「自分が死んだ後はどうなるんだろう」
「私はおひとり様だけど大丈夫かな」
「残されるペットが心配…」
このように悩みは尽きないと思います。
近くに頼れる人がいない場合、考えれば考えるほど夜も眠れなくなるでしょう。
私が考える終活とは、準備することによって将来に対する不安を少しでも減らし、生きている今を楽しく暮らすことです。
あれこれ考えて不安な毎日を過ごすより、できることは今のうちに先手を打っておきましょう。
老後の万一を支える契約はいくつかありますので、何回かに分けて書いていきますね。
財産管理委任契約
これは本人に判断能力があることが前提です。
自分の財産の管理やその他の生活上の事務の全部または一部について、代理権を与える人を選んで具体的な管理内容を委任する契約のことをいいます。
先にも書きましたが、本人に判断能力があることが前提なので、状況としては病気やケガで歩けなくなったりした場合です。
どんなことを委任するかというと、例えば「銀行からお金を引き出す」「各種の支払い」「介護保険の支払い」などです。
財産管理委任契約は当事者間の合意のみで効力が生じ、内容も自由に決めることができます。
依頼した人に対して、財産の管理を委任したことや委任した内容を明らかにするものが『財産管理委任契約書』です。
いくら親しい間柄で当事者間の合意のみで効力が生じるといっても、後日のトラブルを避けるためにも委任を受けた人はきちんと記録し、管理の内容を説明できるようにしておきましょう。
また、金融機関によっては財産管理委任契約書では代理権を認めず、取引の都度、個別の委任状などの提出を要求するところが多いので注意が必要です。
契約を厳格にする際には、公証人役場で公正証書を作成してください。
財産管理の委任契約の他、このあとに説明する「見守り契約」や「死後事務委任契約」は公正証書にした方がいいと思いますが、家族などの間では契約書を自分たちで作成して報酬なしの場合もあります。
契約書はインターネットでダウンロードできるものや、書籍などでひな形が書かれているものもあります。